「2025年の崖」まですぐそこ?企業が取り組むべきDXと対象業務を徹底解説
DX推進が叫ばれ既に数年が経過しましたが、導入事例がわかりにくく自社でどのように活かすべきか、悩んでいる経営者は多くいます。
政府は「2025年の崖」といってDX化を急かしますが、本当に対応しないと取り残されてしまうのでしょうか。なんとなく必要なのは伝わりますが、よくわからないまま導入し、失敗したくはありませんよね。
そこで今回は、話題のDXがどういうものか、IT化と何が違うのかをわかりやすく説明し、いくつかの事例をご紹介したいと思います。
- 1 DXの定義とは
- 1-1 DXで業界の垣根を越えるMaaS
- 1-2 福祉をビジネスにDX!日本橋一等地で活躍中「オリィ研究所」
- 1-3 経産省が警告する「2025年の崖」
- 2 DXの対象業務に当たる場所とは
- 2-1 マーケティング
- 2-2 バックオフィス
- 2-3 カスタマーサポート
- 3 DXのソリューション例
- 3-1 RPA
- 3-2 テレワーク
- 3-3 ペーパーレス
- 4 まとめ
DXの定義とは
DX(デジタル・トランスフォーメーション)はカンタンに言えば「デジタル技術を活かした経営変革」です。
IT技術を駆使して、ビジネスモデルや経営概念、あるいは1つのサービスを丸ごと変えてしまうような改革が該当します。
ひとむかし前に、紙の請求書をパソコンで作ったりして効率化する「IT化」と呼ばれるムーブメントがありました。IT化は単にアナログ業務を電子化する程度でしたが、DXは電子化により業務を効率化したり、ビジネスモデルそのものに変化を与えたりするなど、より前に進んだ改革です。
DXで業界の垣根を越えるMaaS
DXの代表例は、交通業界で進む「MaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)」です。
MaaSとは、技術を利用して移動そのものをサービス化してしまおうという考え方により生まれた新しい交通ビジネスの在り方です。「目的地へのあらゆる交通手段をクラウド管理で一括提供する」と捉えてもらえれば大丈夫です。
前橋市から弊社に向かう交通サービスを例にしましょう。
弊社に向かうには電車にバス、タクシーといった選択肢がありますが、従来は「電車が1時でバスは2時。いやいやタクシーの方が早いのか?」といった具合で、各社のホームページや路線サイトを巡って乗車時間や到着時刻、コストを検討する必要がありました。
ところが、MaaSなら「3時にプリマベーラに到着したい」と指示するだけで、MaaS側があらゆる交通手段から最適かつ最安な移動手段を提供してくれます。
それも単に案内するのではなく、支払や手配も事前に一括で処理するのですから驚きです。MaaSなら「スイカはどこかな?」、「カード使えたかな?」と支払方法悩む必要はありませんし、「タクシーがつかまるかな?」と心配する必要もありません。
そのような煩雑な心配は全部MaaS側が処理してくれます。ユーザーはスマホさえ持っていれば良いんです。
MaaSのスゴイところは、交通各社の関係性を180度変えてしまったという成果です。
従来、交通各社はお互いライバル関係で、どちらかと言えば競合する存在でした。
ところが、MaaSは交通各社のサービスを「移動」というクラウドで包みこみ、相互に補完し合うことで、新たなビジネスモデルを生むことに成功しました。
DXが業界の垣根を超え新たなビジネスモデルを生み出した好例と言えるでしょう。
福祉をビジネスにDX!日本橋一等地で活躍中「オリィ研究所」
DXに興味をもっていただけたところで、もう1つ例を挙げてみましょう。
続いて紹介するのはロボットベンチャー・株式会社オリィ研究所が提供しているロボット「オリヒメシリーズ」によるDX改革です。
この会社が提供しているロボット「オリヒメ」は、分身ロボットと呼ばれる接客・コミュニケーション用途のロボットです。
カンタンに説明すると本体にカメラやマイク・スピーカー等を搭載した遠隔操作型のロボットで、お客様と操作者が直接やりとりできるように作られています。
オリィ研究所はこのオリヒメを活用し、東京日本橋のビルにて「分身ロボットカフェ DAWN」を常設運営しています。
店内には複数のロボットが行き交いますが、特筆すべきは操作者が身体的な事情で寝たきり状態にある人だということです。
業務は主にロボットを通じた接遇ですが、オリヒメシリーズには移動や手操作が可能なものもあり、コーヒーのドリップから配膳までホール業務全般を担う能力を有しています。
つまり「DAWN」は単にロボットを並べたカフェでなく、知を持つ操作者と動を持つロボットの特性を最大限に活かした、究極のDXカフェというわけです。
当然、「DAWN」は大変な注目を集め、ロボット業界に激震を与えました。
オリィ研究所が成したDXは、業界どころか福祉をビジネスに繋げるという究極の変革です。
その成果は民間企業だけでなく政府機関も注目している有様で、テレワークや感染症対策、サービス業の人材確保など、さまざまな領域で実績と注目を集めるようになりました。
経産省が警告する「2025年の崖」
ここまでDXの事例をお伝えしてきましたが、経産省などは「2025年の崖」と評しDXの必要性を訴えています。
2025年の崖は、カンタンに言えば「DX改革を急がないと取り残されてしまったり、予期しないトラブルに見舞われる」という警告です。経産省が2018年に公表したレポートでこの問題に触れ、日本全国で推定年間12兆円もの損失が生じかねないとしています。
経済損失が生じてしまう要因は「古いシステム(レガシーシステム)が限界を迎える」という点に集約されます。つまり、従来使っていたシステムが新システムに遅れを取り競争に負けてしまったり、小規模なシステム改修を繰り返し続けるうちに全容を把握できる人がいなくなったり、開発側の人材が定年を迎えて技術対応できる人がいなくなってしまうといった問題です。
事例としまして、最近2025年の崖から落ちることになった、みずほ銀行の例をご紹介しましょう。
みずほ銀行はご存知、日本のメガバンクのひとつであり巨大な資本を持つ企業です。
ところが同行は2021年に入り、金融システムの障がいによるATM処理や入出金処理トラブルが報じられるようになりました。それも2度、3度と頻発し、そのたびに影響が生じたというのです。メガバンクではあり得ないトラブルと評されています。
原因となったのは、同行が運用する中枢システムのレガシー問題です。
統廃合により成立した同行は当初、メガバンクとしてしっかりしたシステムを作りました。
ところが、時代とともに求められる機能を追加拡張するうちに、複数のベンダーがシステム改修に関与するようになってしまい、複雑化の一途を辿ったのです。
現在のみずほのシステムの全容を把握している技術者はどこにもいないと言われています。報道にあるシステムトラブルが起きた際も、複数のベンダーにより構築された同社のシステム根本的に改修することは困難と評されました。
なお、同行は最終的に行政処分を受けています。
DXの対象業務に当たる場所とは
ここまでDXの概要を実例を交えながらお伝えしました。
ただ、これだけでは自社がどのようにDXを導入すべきか、イメージが難しいかもしれません。そこで、ここからは各業務におけるDX導入例を検討していきたいと思います。
マーケティング
マーケティング業務はもっともDX化しやすい領域です。人工知能やAIを導入することで、売上や利益向上に直接影響を与えられます。
小売大手のイオンHDの店舗マーケティングを例を見ましょう。
小売店の運営には商品展開や広告配置、売り場づくりなど様々な店舗マーケティング戦略ですよね。
同店は従来、経験に依存して戦略構築を行っていました。
ところがイオンHDは、DXにより店舗マーケティング戦略を大きく変える手法に出ます。
同社は店内の至るところにAIカメラを設置し顧客を観察させたり、商品管理システムを人工知能に学習させたり、徹底したDX改革を行ったのです。
この結果、同社の店舗マーケティングは経験からデータによる戦略に切り替わりました。
例えば、店内広告はデータ上、最も多くの人物の視線が集まる場所に変わりました。
また、購買意欲の強い動線を取るお客さんにはAIが営業をかけるように従業員に指示を出すようになりました。仕入れ数や在庫も最もムダのない量に調整され、値引きのタイミングすらAIが最適な価額・時期を判断するようになりました。
結果は皆さんご存知ですよね。イオンは今も大躍進を続けています。
バックオフィス
総務や人事、財務などのバックオフィス業務においてもDXは可能です。
例えば人工知能を駆使した失敗のない選考や経理やAIによる給与計算業務の自動化など、様々な改革が検討できます。
最もインパクトのある例として、牛丼大手の松屋フーズによるAI面接官の事例を見てみましょう。
同社は正社員を対象に年2回の店長昇格面接を実施していましたが、選考内容の関係から
会場は東京および大阪の2か所に限られ、交通や拘束時間等が課題となっていました。
ところが松屋フーズは2020年12月、選考業務に人工知能による「AI面接」を取り入れる決断を下します。
AIがオンライン上で受験者らに質問する仕組みを作ることで地理的・時間的課題を解決。
同時に、回答内容から対象の内面をAIが文章にまとめることで採点担当者の負担軽減にも繋げたのです。
採用活動は属人性が強く、誤った判断がミスマッチを呼ぶケースもしばしばあります。
人工知能による採用判断ソリューションはこうしたミスマッチ解消としても注目度が高く、今後さらに広がりを見せると見られています。
カスタマーサポート
最後に紹介するカスタマーサポート部門でのDX事例を紹介します。
カスタマーサポートには日夜様々な要望が寄せられますが、人間の感情というものは読みにくく、時として、対応次第で防ぐことができたクレームを抑止できず、ブランドイメージを棄損するリスクが発生します。
このため、カスタマーサポート業務は常に顧客トラブルの最小限化が課題となり、適性のある人材採用や従業員教育に多大な労力と資本を注いでいます。
ところが、最近になって人工知能による感情把握サービスである「AI感情分析」を導入する事業者が登場しました。つまり、顧客の口調やトーンなどからAIが現在の感情を分析し、これをオペレーター側に通知することで、顧客トラブルの抑止を支援するという働きです。
AI感情分析は、より質の高いサポートサービスの提供だけでなく、従業員離職率の低下にも効果があると言われています。
DXのソリューション例
最後に中小企業での導入例が多くあるDXの具体的なソリューション例をご紹介します。
RPA
RPAとはロボティック・プロセス・オートメーションの略称で、単純なタスク作業や入力業務など定形化できる業務をボットを駆使して自動化するという技術です。
プログラミング技術および環境を駆使してオートフローを作成する従来の自動化プログラムと異なり、RPAはプログラミング言語を使わないユーザーでもカンタンに自動化ボットを作成することが可能です。
このため、IT人材が不足している中小企業でも導入しやすく、手軽なDXソリューションとして評価されています。
テレワーク
感染症対策として注目を集めるテレワークも技術の力で働き方を変えたDXの一形態です。
テレワークは無料通話アプリのZOOMなどを利用するだけで導入可能なため、コストのかからないDXとして優秀です。ただし、通話アプリだけではコミュニケーション面を抱えてしまうことが多く、サボりや生産性の低下を招くとも言われています。
このため、テレワークを導入する企業の多くは上下左右と気軽に交流できる社内SNSなどを導入し、コミュニケーション面を補う施策を講じています。
ペーパーレス
紙媒体で処理していた業務を電子化する試みもDXの一形態として数えられます。
単純に電子化するだけではIT化に過ぎませんが、電子化により作業工程を減らし生産性の向上を実現したり、電子化によりスムーズにテレワークに移行するなどを実現すれば、DXに繋がります。
アナログ業務の大多数は電子化により効率化しますので、対象業務の多い企業では検討の価値があるでしょう。
まとめ
DXは電子化技術を駆使して業務効率化やビジネスモデルの変化を実現する新しい時代の改革です。
大企業から中小企業に至るまで多くの企業がDXに挑戦し、生産性の向上やコロナ禍への対応を実現しています。大きな改革としては人工知能やロボット導入などが挙がりますが、テレワークやペーパーレス化など手軽なものも気軽に実現できるDXとして人気です。
ただし、ペーパーレスやテレワークを利用した非対面型の勤務形態はコミュニケーション面の課題も指摘されています。
サボりやボイコットは論外として、非対面ならではの孤独感や不安感による生産性の低下などは、企業としてしっかりフォローしたいところです。
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